「開会式・閉会式」インタビュー vol.01

野村萬斎さんと青柳正規さん

初回は、東京2020組織委員会の文化・教育委員会委員の野村萬斎さんと、東京2020組織委員会の東京2020有識者懇談会委員の青柳正規さんにお話を伺いました。

青柳正規さん(以下青柳)
今までで、印象に残っているオリンピック・パラリンピックはありますか?

野村萬斎さん(以下萬斎)
ロンドンは街中が盛り上がっていたなという印象がありますね。盛り上がった理由として、ロンドンというのは生活先進国で、みんなが時間を上手く使って、演劇や音楽等いろいろな文化を楽しむという土壌がある場所であったからだと思います。

青柳
一方で、日本は昔から「ハレ」と「ケ」があって、普通の「ケ」のときは仕事をして耐えていて、その代り「ハレ」のお祭りでパッとストレスを発散するという、世界的に見ても祭り大国だと思うんですよね。そいう観点からみると、ロンドンとはまた違った意味で開会式・閉会式あるいはオリンピック・パラリンピックというお祭りを盛り上げるのは決して苦手ではないのではっていう気もしますけどね。

萬斎
なるほど、そうですね。ただ、国民性がそうであっても、イベントに参加できる時間を作らなければならないと思うのです。自分たちには関わりのないことだとか、時間がないから、という理由で無関心にならないように、企業そのものが祭りに参加して頂いたり、何か整備をしないといけないかと思いますね。

インタビュー中の野村萬斎さん

日本は世界に類を見ない、多層的重層的な文化であるのが特徴だと思う

青柳
東京のオリンピック・パラリンピックの開会式・閉会式についてどうお考えになりますか?

萬斎
開会式・閉会式、特に開会式に関して、まず重要なことは日本人のアイデンティティがどこにあるか、ということを日本人が自覚しなければならないですよね。古典芸能に限られたことではなく、色々なことも含めて国民性というものを認識し、そして、それが他の国にどう映って欲しいのかということだと思います。

青柳
日本の文化を世界に発信する絶好の機会だけれども、一方で外からの目が必要で、我々は独りよがりになってはいけないわけですよね。たから日本文化をいかに相対化するかということを考えるのに、今度の開会式・閉会式は、いいチャンスだと思いますよね。

インタビュー中の青柳正規さん

萬斎
まさにそうだと思います。僕が思うのは、日本は非常に重層的多層的な文化であるというのが一つの特徴だと思うのです。芸術的なところでいうと、雅楽・舞楽という平安時代の貴族文化から、能・狂言という武家文化の象徴もある。お華やお茶も含めた禅の思想を受けた中世の文化があった後、江戸時代になって歌舞伎などの町民文化に移っていき、そして西洋化され、新劇ができ、小劇場ができて、アニメが出てきて。そのように前にあったものが否定されずにずっとすだれ状に残っている。大陸的な発想で言うと、どうしても前の文化を否定してしまうので、残らず埋もれてしまいます。
例えば、能・狂言にはいまだに伝書というものが残っていて、もちろん、時代時代で変わっていませんとは言わないけれども、ほぼどういう風に変遷していったかのプロセスまでわかるわけです。そしてまた、それが否定されることなく、後発の文化、歌舞伎などが出てきても、残っているということの面白さですよね。本当に古いところから今でいうなら、漫画やアニメまでありますからね。

青柳
そのような重層的多層的な文化になったという理由は何だと思いますか?

萬斎
世界の文化の基準の1つはシルクロードにあるのではないかと思うんですね。日本はそのシルクロードの東端にあるという認識を持ったらいいじゃないかと思います。日本より向こうは太平洋という絶海になってしまうために、言い方を選ばずに言うならば、日本は吹き溜まりだと思うのです。 例えば、ギリシャの仮面劇の仮面の発想というのがシルクロードを通って、バリや韓国などを経ながら、日本に伝わってきたわけです。その発想が日本では能や狂言に残っていて、それが日本で独自に発展する。端っこであり、吹き溜まりだからこそ、それが発酵するわけです。普通だったら、そのままとどまらず仮面の発想は流れ去っていくのだけれども、日本というところに吹き溜まり、発酵し、変貌する。日本にはこういう特殊な才能があると思うんです。こういう風に、二次的な才能の開花というか、アレンジの上手さであるというか、本家よりもある種、上回る価値観を持つというようなところにやっぱり僕は凄さを感じますね。

インタビュー中の野村萬斎さん

青柳
そうですね。シルクロードでは、文化やモノを途中で滞らせてしまったら通路にならないんですよね。だからどんどんパスさせていき、通過した先が日本や中国の沿岸地域にあたるということで、そこで発酵するという化学現象・反応を引き起こすわけですよね。

お互いが相手を傷つけず、立てて、共存するという日本の発想を伝えたい

青柳
開会式・閉会式でも、このようなことを表現していけたらいいなと思いますか?

萬斎
古代から現代までの文化の流れが脈々とすだれのように、前を否定せず、繋がっている、混在していくという一つの在り方を見せるべきだと思います。これだけ色々な文化のバリエーションがあるというのは、他の国には類を見ないのではないでしょうか。 価値観が多種多様にあっても、ぶつかり合わない。お互いが相手のアイデンティティを傷づけることなく、立てて、共存するという発想ですよね。それが世の中の平和にとってどれだけ重要かということです。日本が今オリンピック・パラリンピックをするという価値はそこにあるのではないでしょうか。

インタビューの様子

青柳
おっしゃる通り、今度のオリンピック・パラリンピックでは、日本の多様性というか、いいものを外から取り入れる柔軟性、そして自家薬籠中のものにして、国風文化にしてしまう。そういう柔らかさが、今の世界の中で非常にメッセージとして役立つんじゃないかと思います。

みんなでつくる開会式・閉会式!

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