「開会式・閉会式」インタビュー vol.02

中川翔子さんと田中優子さん

今回は、東京2020組織委員会のマスコット審査会委員の中川翔子さんと、東京2020組織委員会の東京2020有識者懇談会委員の田中優子さんにお話を伺いました。

田中優子さん(以下、田中)
今までで、印象に残っているオリンピック・パラリンピックはありますか?

中川翔子さん(以下、中川)
はじめてテレビで見たオリンピックは、たしか1992年のバルセロナオリンピックだったと思います。「オリンピックまで何日」と煽りが凄かったのを覚えていますし、世界がこんなにも盛り上がってザワザワしているなんて、と初めて感じた印象があります。選手たちが活躍したということでは、アテネオリンピックが凄く印象に残っています。また、競技ではないのですが、チャンネル4(イギリスのテレビ局)のパラリンピックのプロモーション映像がとても印象に残っています。パラリンピックをオリンピックのように集中して見たことがない方々にも届くように、障がいがあるけれども、もの凄いパワーと努力で新しい未来に向かって進んでいるということを感じさせる映像でした。

インタビュー中の中川翔子さん

田中
私は、中川さんは経験されていない、前の東京オリンピックのお話をさせて頂ければと思います。私は小学生だったのですが、開会式の時に真っ赤なジャケットを着た日本選手たちが、非常に秩序正しく、大変明るい雰囲気で入ってくるのをテレビを通して見ていました。その時、私はすごくうれしかったというのとはちょっと違う感想を持ちました。「これは私が暮らしている世界とは違うな」っていう感覚でした。当時は高度経済成長に入ったところで、まだまだ日本は格差が大きく、私は、スポーツというのは、お金持ちの方がやるものなのかなと思っていたのです。開会式を見た時、まずそう感じました。しかし、開会式を見ていくと、経済的な事情で選手を育てられず、1人や数人しかいない国もあることに気づきました。その時に、世界には事情を抱えた国がたくさんあるけれども、オリンピックはそういう国も平等に集う場所なんだという印象を持ちました。さらに、手に汗握って見ていたことで印象に残っているのはアベベ選手です。きちんと教育を受けられないような状況の中でアベベ選手はずっと練習してきて、オリンピックで2連覇するのです。その姿をテレビでずっと、ゴールまで本当に息が付けないぐらいに、心が躍って、頑張って欲しい、と思いながら見ていたことを覚えています。

インタビュー中の田中優子さん

若者が一丸になって盛り上がる大会になって欲しいと思います

田中
東京2020大会がどの様な大会になったらいいと思いますか?

中川
やはり、若者の世代ですごく盛り上がる、歴史に大きく刻まれる大会になって欲しいと思います。前回の東京オリンピックのことは本や映像資料で見せて頂くと、日本中全員がテレビに釘付けになって、皆が同じ方向を向いて大変盛り上がっていたという印象があります。今は時代が変わって、娯楽が増えてきたこともあり、10代20代の全員が同じ方向を向くことは少なく、ひとりひとり色々なことに関心を持つようになってきていますが、一方でインターネットがものすごく整ってきたこともあり、日本中だけでなく地球規模で1つになりやすくなっているとも思います。若者のみなさんも、この機会に一丸になって盛り上がって欲しいと思います。また、日本は車いすの方や盲目の方が1人で自由に行き来できない場所がまだ多くあるので、2020年までに少しでも改善された状態で、パラリンピックを迎えられればと思います。

田中
私は、まずオリンピックは国を自慢するところではないと思います。人間の尊厳を感じる、つまりひとりひとりの人間ってこんなに素晴らしいのだと思える場所であるべきだと思うのです。1964年の東京オリンピックでは、私はアベベ選手などから、この「人間の尊厳」を感じました。どの様な状況の中でも、自分で考えて工夫して努力して自分を作っていき、それを示すことは、多くの人達が、人としての素晴らしさに気付くきっかけになると思うのです。見ている人が、自分も何かできるのではないか、ということを感じることが大事なのだと思うのです。また、子供の頃の私が、これは自分の世界じゃないって思ったのと同じように、世界の貧しい人達や、災害や戦争で避難している人々が思うかも知れない。そういう人びとに対しても、寄り添う、参加できるオリンピックであって欲しいと思います。そのためには、日本が持っている弱点を避けてはいけないと思うのです。それは災害の多発する国だという点です。これから3年でまた何が起こるかわかりませんが、負の歴史を日本は抱えている。けれども、それを乗り越えて、また乗り越え半ばで、オリンピックを今やっているのだということを一貫したメッセージで伝えることが必要だと思います。

中川
そのためにも、盛り上がることが重要だと思います。まずは、SNSをきちんと整備する必要があると思います。今はテレビの放送の関係などで、情報が制限されたりすることがありますが、会場で観ている人もテレビを観ている人も自由に実況ができるような状況を作り上げることができれば、面白いのではないかと思います。

田中
それは興味深いですね。見ている人もいろんな感想を持つと思います。熱狂する人もいれば、そうでない人もいるなかで、そういった声がインターネットでどんどん書き込まれて、一方向ではなく双方向でやりとりされて、しかも世界規模で双方向でやりとりできる仕組みというのが開発できたら素晴らしいですね。多くの声が寄せられて、お互いに別の国の人が感想を言い合うことができるようになると、画期的な開会式・閉会式が出来るのではないですかね。

エンターテイメント界で活躍する才能ある10代が活躍できるチャンスになれば

田中
オリンピック・パラリンピックの開会式・閉会式でどの様なことが世の中に伝わればいいと思いますか?

中川
アニメ・漫画・玩具・コンテンツというものは、世界中どこに行っても、好きな方が多かったり有名だったり、また言葉を飛び越えて、一瞬で人々を笑顔でつなぐ力があると思っています。会場にいる人もテレビを観ている人も、街にいる人もみんなが色々な形でアニメ・漫画・玩具・コンテンツに触れられるように、テーマパークのアトラクションのように楽しめる作りになっていたら面白いのではないかと思います。また、日本の都市ってとても面白いと思います。たとえば原宿・渋谷などの若者の街、上野は歴史があって、秋葉原・中野がサブカルチャーという文化があって、というように。例えば、色々な街をスタートとして選手の方々を徐々に会場に向かって誘導していき、その様子を中継するというのも面白いと思います。その中継を、会場のスクリーンやテレビなどで3Dで見られるとか、システムも進化していって全てが盛り上がってほしいなと思います。
あと、今の日本は10代の若い力が凄いと思います。選手の皆さんもそうですし、エンターテイメントでもそうだと思うのです。スポーツの世界では10代の選手でも活躍の場はあると思うのですが、エンターテイメントではなかなか活躍するチャンスがないので、開会式・閉会式で若い皆さんが力を発揮できるチャンスがあればいいなと思っています。若い力と伝統、世界から注目されている日本の繊細さや貪欲なところ、逆に激しい部分もあったりと、日本の面白い部分を映像でお届けしたり、実際に日本に来られた方は歩き回ってこの部分に触れてもらえたらなともいます。

インタビュー中の中川翔子さん

田中
私は、先ほど申し上げたことからの継続になりますが、世界は色々な問題を抱えていて、日本もそうだと思います。開会式・閉会式では、完璧な日本がここにあるというわけでなく、問題を抱えた日本がここにあって、それは世界中のみなさんも同じことであり、だからこそここに集まっているということを思い出すのがいいのではないかと思います。美しいものが一方で必要だと思うのですが、私たちが目をそむけてはいけないもの、例えば震災などを映像などで伝えた方が良いと思います。
一方で、美しいものですが、地方衰退など言われていますが日本の地方は本当に美しいと思います。大会は東京で行われますが、実は日本は非常に多様な風土や気候、自然があるということを映像や音などで伝えられればと思います。それから江戸ですね。例えば歌川広重は『名所江戸百景』という素晴らしい名所絵を描いています。この絵は、江戸末期に描かれているのですが、江戸を刻み付けるだけに作ったのかと思うぐらい素晴らしいものです。例えば、80%の図絵に水が描かれているのですが、江戸が水の都であったということがよくわかります。また葛飾北斎も江戸を描いていまして、人が集まっている様子や、そこでの活気、人々の動きというのがよくわかります。これらの絵を使って、現在の東京だけではなく、東京が辿ってきた美しさや活気がある歴史というものを伝えていければと思います。

驚きがあるような演出で日本の素晴らしさを伝えていければと思います

田中
具体的にオリンピック・パラリンピックの開会式閉会式がどんな風になればいいと思いますか?

中川
自分も開会式・閉会式に参加していると思えることがすごく大事だと思います。「あー、やっているな」というように通り過ぎるという状況ではなく、会場で見られるのが一番いいのですが、世界中でテレビの中継やSNS、インターネットでもこんな風に盛り上がっているのだと見られて、見ている方も参加している感覚になれることが重要だと思います。

田中
全体として盛り上がるということで言いますと、ロンドンオリンピックは、大会の直前までいろいろな催し物をやっていたと聞いています。これは必要なことだと思います。日本ですと、歌舞伎や能・狂言、お祭りや着物も素晴らしいものがあると思います。日本をもう一度再発見するという気持ちで大会の直前まで日本の文化を伝え続けて、日本は面白いなって思うきっかけになるようなイベントを、東京だけではなく日本各地で仕掛けられたらと思います。

中川
そうですね。その人の人生の中で、もの凄く大きな出来事になってくれればと思います。健常者の方も障がい者の方も一緒に笑顔になって、日本のいろいろなところに行ってみたいなと思えるようなことができればと思います。ファッションや食、街、アニメ、マナー、伝統文化など、日本には、浸透していない部分も含めて、面白いものがたくさんあると思います。海外の方や、オリンピックを楽しみにしている全ての人々に、これもあれも日本なんだ、と楽しんでもらえるように全力でおもてなしできればと思います。また開会式・閉会式では、アトムやドラゴンボールが空を飛んでいたり、ステージでは色んな歌手がショーを行い活気がすごかったり、選手のみなさんも色々な場所から登場したりと、どんどん語り継ぎたくなるような驚きがたくさんあるものになって欲しいです。

田中
最後にみなさんに一言頂ければと思います。

中川
東京でオリンピックが行われるということが、いかに素晴らしいことかということを、前回の東京オリンピックを経験された方も、今の10代や若者も含めて全世代で語り合いながら、盛り上がっていければと思います。また、世界中の方々が、日本はなんて面白くて、エキサイティングな文化もあって面白い場所もあるんだ、と日本を大好きになって頂ければと思います。そのために、全力でおもてなしまくりたいなと思います。

インタビュー後の中川翔子さん

プロフィール

中川翔子:1985年5月5日生まれ 東京2020組織委員会 マスコット審査会委員。
タレント、声優、イラストレーター、女優など、幅広く活躍。アニメや漫画、ゲームなど多様なソフトコンテンツに深い造詣を持っている。

田中優子:1952年1月30日生まれ 東京2020組織委員会東京2020有識者懇談会委員、法政大学総長。
江戸文化研究者であり、江戸時代を明るい時代と考える「江戸ブーム」の一翼を担った。
2005年には紫綬褒章を受勲。