「開会式・閉会式」インタビュー vol.04

市川海老蔵さんと青柳正規さん

今回は、東京2020組織委員会の文化・教育委員会委員の市川海老蔵さんと、東京2020組織委員会の東京2020有識者懇談会委員の青柳正規さんにお話を伺いました。

青柳正規さん(以下青柳)
今までで、印象に残っているオリンピック・パラリンピックはありますか?

市川海老蔵さん(以下市川)
オリンピックをそんなにたくさん見てはいないのですが、印象的なのはロサンゼルスですかね。まだ若かったのですが父が見ていまして、ロケットの様なものを背負って人が飛びましたよね?あれは、とても印象的でした。
あと、僕は中学校の時に、バスケットをやっていたのですが、その時のバルセロナオリンピックのドリームチームはとても印象的でした。マジック・ジョンソン、マイケル・ジョーダン、ラリー・バードとか、あの無敵っぷりは何なんだと思いました。またその時、カール・ルイスも全盛期で、なんてこの人たちは強い人たちなんだろうと思って見ていましたね。

青柳
たしかに、ロサンゼルスは、人間ロケットみたいなことをやったから、あの開会式が非常に有名になりましたよね。

日本人だからできる素晴らしいものを作っていきたい。

市川
2020年は東京でやるにも関わらず、東京の方々から、今「オリンピックくるぜぇ!」という情熱をあんまり感じないんですよ。また、地方の方々も「どうせ東京でやるんでしょ」っていう感じが否めない。でも、僕はそういう感じは嫌なんです。オリンピック・パラリンピックの開会式・閉会式の前にはフェスティバルという時間があるんです。その間に、聖火が日本中を周ったりするので、草鞋を編む、傘を作る、着物を着る、あなたは踊るではないですが、すべての都道府県で、みんなが絶対何かしらオリンピック・パラリンピックに関係することに参加するという形を作りたいと思っています。それで、日本中が1つになって開会式に向かっていき、ドーンと盛り上がるみたいなことができればと思います。

インタビューの様子

青柳
僕は、日本の特徴を、日本以外の方々に理解してもらうために、どうわかりやすく表現するかだと思うのです。例えば、安全だし、清潔だし、それからいろいろなモノやシステムのクオリティが非常に高いということであるとか。あと、日本は天災がしょっちゅう起こりますが、めげることなく、どう上手く復興させているかということを、重くなり過ぎずに全世界にわかってもらえるように発信できたらなと思いますね。

市川
おっしゃる通り、1940年の幻のオリンピックは関東大震災からの復興、1964年は戦後からの復興、今回もやはり復興ということで3回目のオリンピックになると思うのですが、日本人は復興を繰り返ししてきたからこそ、今の我々の力があるのだと思うのです。東北や熊本で大きな災害があっても、それを復興していく力が日本にはあるということ、そして、どうして日本人はそういう力をもっているのかということを、青柳先生がおっしゃられたように、リアルで真実味がありシリアスではありながら、重くなり過ぎないように伝えるということを、大会の競技の前後に関わっている我々は考えていきたいなと思いますね。

青柳
パラリンピックについてはどう考えらますか?

市川
パラリンピックについては、例えば我々が普通に歩いていると、何も難しくないですよね。車いすでは普通のタクシーは乗れないし、バスも中々難しい。車も乗れないので介護タクシーを頼まないといけないんです。そうすると、一手間二手間、三手間、四手間かかるんですよね。パラリンピックに出られる方々はもちろんですが、見に来られる方も車いすで来られる方が多いのではないのかなと思います。そういう方々は、競技される選手を見て自信を持ちたい、自分も希望を持ちたいって思って見に来られている方も多いと思うんですよね。そういう方々の為に、2020年までに少しでも暮らしやすい社会を作って、例えば海外から来られた方々が、自国に帰った時に「日本は何かすごく我々に優しかった」って口評判で広がるって風なことになればいいじゃないかなって感じますね。

インタビュー中の市川海老蔵さん

青柳
それ、素晴らしいですね。

市川
やっぱり日本人だからできる素晴らしいものを作りたいじゃないですか。

日本の復興する力、これが一番だと思います。

青柳
次に、開会式・閉会式で日本が世界に何をアピールするしたらよいと思いますか?

市川
芸術的なことを言いますと「余白」ですかね。画で言うと、海外の画は豪華絢爛に描かれていると思うのですが、日本の画は月があって、柳があって、そして余白がありますよね。この余白を楽しむ美意識っていうのは日本人ならでは、だと思うんですよ。こういう余白を世界の方々に感じて頂けるようなものがアピールできれば、世界の方々にも何か得になるのではないかと思います。

青柳
なるほど。僕は、先ほど言ったことと重複しますけど、やっぱり清潔な美しさ、それから力ずくの豪華さではなく優しい豪華さとか美しさとか、柔軟さとかと思いますね。そういうものをアピールすることで武力と武力の衝突とかを避けるということができないかと思いますね。

インタビュー中の青柳正規さん

市川
IOCのバッハ会長がお話しされたことだと聞いているのですが、スポーツと社会を近づけたいんだとおっしゃられたようです。そうすることによって、今青柳先生がおっしゃられた戦争というものも、少し緩和されていくのではないかと、つまり平和ということに繋がるのではないかということですかね。我々日本人は日本にいるので感じていないですけど、日本は安全ですし、清潔ですし、食べ物も美味しいですし、ほとんどのことが素晴らしいんですよ。だけど、日本にいるので自分たちは気づいていない。同じことになってしまいますが、日本にいるので、復興する力を持っているということにも気づいていない。僕は、開会式・閉会式で日本が世界にアピールするものは、絶対に復興する力、これが一番だと思います。

日本人が、根こそぎみんな参加して、トコトンやっていく。そんな開会式・閉会式になって欲しい。

青柳
開会式・閉会式がどの様になればいいと思いますか?

市川
そうですね。我々日本人は、日本独自の美しさ、日本独自の美意識、日本独自の感覚など、相当なポテンシャルを持っていると思うのですが、おくゆかし過ぎまして、「そんなものは持ってございません。」みたいなことをよく言いますよね。でもそうではなくて、開会式では、このポテンシャルを引き出して、具体的に表現することで、我々日本人が自信を持つ、そんな開会式にしたいなと思いっています。あと、開会式は正直長いという印象がありますね。式典のパート、選手たちの入場というものを細分化して、どの時間に何がやっているかわかりやすくして、自分が見たいところだけが見られるようにしたいなと思いますね。

青柳
閉会式は、例えば1964年の時も選手が一斉に入ってきて、ぐちゃぐちゃになりながらも、みんな楽しそうに「終わったね」と言いながら喜んでいましたよね。たから、閉会式は、オリンピックやパラリンピックを終えた後なので、選手と同時に、例えば「だんじり」とか「裸祭」とかお祭りの人たちも一緒になって入ってきたりして、終わりを祝うっていうような感じとかどうか、と思いますね。

市川
それと今、開会式・閉会式に関して、あんなことをやっちゃって、とネットで書いたりするわけです。だからこそ、そういう人達も一緒に、みんな参加してもらえるような開会式・閉会式を作ってもらいたいですね。それでも色んな人がいるとは思うのですが、根こそぎみんなで、トコトンやっていく。そういうことを眼目として、みなさんとお話しさせて頂いています。

インタビュー中の市川海老蔵さん

本インタビューは2017年6月7日に実施されたものです。

プロフィール

市川海老蔵:1977年12月6日生まれ 東京2020組織委員会文化・教育委員会委員、歌舞伎俳優。
歌舞伎役者として古典の大役をつとめる一方、俳優として、テレビドラマ・映画・舞台などにも出演するなど幅広く活躍。

青柳正規:1944年11月21日生まれ 東京2020組織委員会東京2020有識者懇談会委員、東京2020組織委員会文化・教育委員会委員長、東京大学名誉教授。
古代ギリシャ・ローマ美術史研究を専攻し、現在は日本におけるポンペイ研究の第一人者。国立西洋美術館館長や文化庁長官を歴任。