「開会式・閉会式」インタビュー vol.07

東京2020組織委員会の文化・教育委員会委員のSHELLYさんと、東京2020組織委員会広報局に勤務する、北京オリンピック、ロンドンオリンピック競泳日本代表の伊藤華英さん

今回は、東京2020組織委員会の文化・教育委員会委員のSHELLYさんと、東京2020組織委員会広報局に勤務する、北京オリンピック、ロンドンオリンピック競泳日本代表の伊藤華英さんにお話をお伺いしました。

伊藤華英さん(以下、伊藤)
今までで、印象に残っているオリンピック・パラリンピックはありますか?

SHELLYさん(以下、SHELLY)
一番最近で言うと、こないだのパラリンピックでボッチャを見て、すごくハマりました。TVを見ていたところ、ちょうどスポーツをやっていて、それがボッチャだったのですが、「ああ。こんな競技あるんだ」と思って何となく見たのがきっかけです。見ているうちに、「あ、そんなルールがあるの?」「あ、これはダメなんだ」「これは高得点なんだ」と、だんだんと面白くなり、結局最後までずっと見てしまいました。また、試合後の選手インタビューを見ていても、いじられ役の方がいたり皆さんキャラが濃い方が多く、これは流行りそうだなと思いましたね。

伊藤
SHELLYさんは、その後、ボッチャやられたことありますか。実際にやっても面白いですよ。

SHELLY
やったことないです。全然知らなかったので、ボッチャを知ったのは凄い発見でした。オリンピック・パラリンピックは、新しいスポーツと出会うきっかけになったりもするので、いいですよね。

伊藤
今回もオリンピックで5競技、パラリンピックで2競技増えましたし、種目も新しいものが採用されましたよね。SHELLYさんは、オリンピック・パラリンピックの開会式・閉会式を見られたことありますか?

SHELLY
ありますよ。個人的に私は、メッセージ性が強い開会式・閉会式が好きです。花火が凄かったり、有名人がたくさん出てくるのも面白いのですが、何かちょっと皮肉とか、これって笑っているけど実はこういうことが言いたいのではないかなというものが好きです。ロンドン大会は、こういうちょっと斜に構えた感じが多くて、面白く感じました。伊藤さんは印象に残っているものはありますか?

伊藤
実は、今まで自分がオリンピックに出ていたこともあって、開会式・閉会式はリオで初めて見ました。現役時代は、自分が選手として参加するということもあり、人の頑張りに対して一喜一憂したり、感動しないようにしていたのですが、引退して人の頑張りに寄り添って見ることができてすごく楽しかったです。誰とか関係なく、その人の背景を想像するだけで、どれだけ練習してここまで来たんだろうとか思って、すぐに涙が出てきてしまいました。

インタビュー中のSHELLYさん

SHELLY
それは選手ならでは、で面白いですね。

伊藤
そうなんですよ。自分が出場する側にいて忘れていましたが、オリンピックは無条件に感動するものだなとリオで確認しました。リオは自分にとって、オリンピックを見るということを経験できて人生の中のターニングポイントになったと思います。

SHELLY
意外ですね。自分が凄く活躍したとか、壁にぶつかったオリンピックではなくて、選手ではなくなったオリンピックがターニングポイントになるなんて。

伊藤
そうなんですよ。現役の時は、オリンピックは戦いに行くという場所で、オリンピックを極力感じないようにしていました。なので、開会式も出たことがありませんでした。

SHELLY
なるほど、私、質問が変だなって思っていたんですよ。「開会式・閉会式を見られたことありますか。」って聞かれたので、「そりゃあるでしょ」って思っていましたが、そういうことだったのですね。現役の時は開会式・閉会式の時、どう過ごされていたのですか?

伊藤
ロンドン大会の時は、競泳と柔道は開会式の次の日が試合で、朝の6時ごろには選手村を出ないといけないので、競泳選手は後半の競技に出場する2~3人ぐらいしか開会式に出てないと思います。多くの選手は、テレビを見るのではなくて、臨場感を感じたくて、選手村の部屋のベランダに出て「花火上がったね」と話していたり、隣の海外の選手と話しながら、皆で遠くを見ていたというのが印象に残っています。

インタビュー中の伊藤さん

SHELLY
閉会式はどうですか?

伊藤
閉会式は日本に帰らなくてはいけないので出たことはないです。選手村の宿泊できる選手の数の問題で最後まで滞在できないというのもありますし、日本選手団として派遣されていて責任もあるので、勝手に残ることもできないですね。ただ国によって違うようで、例えばオーストラリアの選手は最後まで残って、多分全員で閉会式に出ていると思います。

海外の方をおもてなしするだけでなく、日本や日本人が変わるきっかけになる大会になって欲しい

伊藤
東京2020大会がどの様な大会になったらいいと思いますか?

SHELLY
やはり日本でやるからには、見に来た人も、色々な国のテレビで見ている人にも「日本っていいところだね」という印象を残せたらと思います。開会式・閉会式もそうですし、選手の人達がインタビューで「日本はどうですか?」と聞かれたときに、「試合の後にみんなで街に行ったんだけど、日本はこういうところが楽しくって」というのを選手の口から言ってもらえたらなと思います。そいうことで、「あ、日本に行ってみたいな」と思ってもらえる、日本をアピールできる大会になったらいいなと思います。

伊藤
そうですよね。

SHELLY
日本人ってみんなで「イェーイ!」という「盛り上がる」国民性ではないので、多分ものすごい「おもてなし」をして「盛り上げる」というところに行く気がしています。なので、みんなの気持ちを一つにして、みんなで盛り上げて日本をアピールすることで、結果的に2020年以降もどんどん観光客の数が増えていく、ということになったら意味のある大会になるのかなと思います。

伊藤
一体感が重要ということですよね。日本をアピールするということにおいてオリンピック・パラリンピック全体でもいいですし、開会式・閉会式でもいいのですが、何か思うところはありますか?

SHELLY
そうですね。オリンピック全体でいうと、街づくりというところで、自分たちで「東京でオリンピック・パラリンピックをやってください、東京はいいところですよ。」と招致したしたにもかかわらず、オリンピック・パラリンピックの規定に伴っていないことに対して努力しないというのは、当然お金がかかることなので大変なことだと思うのですが、ちょっと違うのかなという気がしています。実際に私もベビーカーで街を動いていてもめちゃくちゃ不便に感じるところがあります。例えば駅で乗り換えようと思っても、エレベーターの設置場所がよくなくて、かなり遠回りしないと移動できないということがあります。ベビーカーでも大変なので、車椅子の方はもっと大変だと思います。今のままだと、「海外から皆さんパラリンピックを楽しみに来てください」と言っているにも関わらず、選手の人も生活しづらい、応援に来る車椅子の方も移動しづらい状況だと思うので、おもてなしの気持ちでもうちょっと頑張らないといけないのではないかなと思っています。伊藤さんは実際にいろいろな大会を見られてきたと思うのですが、他の大会はどうなんでしょうか?

伊藤
選手として参加している時は、どんな準備をされて、どういう風に行われているのかということは考えていなかったのですが、ロンドンはオリンピックに来たなという感じがしましたね。引退した後に調べてみると、きちんと準備されていたということを知り、それが自然と選手たちにも伝わっていたんだなと思いました。

SHELLY
例えば、どんなところですか?

伊藤
ボランティアの人たちに触れ合ったときに、「いいな」と思う瞬間が結構あって、例えばですが、選手村って、きれいに掃除がされていたりすると、このオリンピックはいいな、と感じます。先ほどのSHELLYさんのお話にもありましたが、選手が発信する情報の力ってすごくあると思うので、選手に近いボランティアの人の教育も必要かなと思います。ベビーカーを押された時の話がありましたが、困っていても誰も助けてくれなかったのですか?日本人だから、ということもあるんですかね。

SHELLY
日本人は冷たいってよく言われると思うのですが、私は、日本人は自発的にいけないだけだと思っています。例えば、デパートでは優先エレベーターがあると思うのですが、私がベビーカーで乗ろうとしたときに満員で、乗れない時がありました。その時に、「すみません、これでしかいけないので、降りていただいてもいいですか?」というと、「ああ、すみません」って若い子とかは降りてくれるんですね。彼らは悪気があるわけでなくて、本当に気づいていないだけなんだと思うんです。多分、日本人は団体行動とか混雑している生活に慣れすぎていて、人のことは気にしない、つまり嫌な人も目につかないけれども、困っている人も目につかないということがあると思います。例えば、満員電車などでケンカやトラブルが起きないという面もあるのですが、その反面、困っている人を見つけて助けてあげるというところまでの気持ちの余裕がないと思います。でも、みんな気持ちがないわけではなく、言えばやってくれるので、自ら勇気を出して一声かけてくれると、すごくありがとうと思いますね。

インタビュー中のSHELLYさん

伊藤
なるほど。困っている人に対して自ら勇気を出して一声かけるというようなコミュニケーションの取り方もレガシーに残していける大会にできればいいですね。

今こんな時代なので、日本は平和であるということをアピールしてもいいのかなと思う

伊藤
オリンピック・パラリンピックの開会式・閉会式でどの様なことが表現されるといいと思いますか?

SHELLY
やはり日本文化がたくさん織り込まれているといいですね。この日本文化とは、外国人が好きな日本でいいと思っていまして、例えば、わびさびや静と動とか、そういう微妙な表現をプロの方に演出して頂けるとすごくいいと思います。あと、メッセージ性を何か持った演出にして欲しいなと思います。特に、今の世界を考えると、オリンピックの年が戦後75年になるので、戦後75年と言える状況を保っていくことももちろん大事ですが、それを何で保つことができたのかということを、改めて自分たちで振り返るのがいいのではないかと思います。「平和」というと使い古された言葉ですが、実際に日本は平和だと思うので、何でこうなったかを考えて欲しいですね。例えばですが、73年前に恐ろしい経験をして、ものすごく大変な思いをしたところから、今の発展が始まっている気がするので、直接的ではなくても何かそういう表現があってもいいと思います。また、こないだの東北が大変なときも、日本はお互いに、みんな気持ちを一つにして乗り越え、今もちゃんと前を向いて動き続けていて、しかも、誰ともケンカせずにという言い方は変かもしれませんが、近隣国とも平和を保ちながらやっているということは、世界でもすごいことだと思うので、今こそ、この部分はアピールしてもいいのかなと思います。

伊藤
そうですよね。そうやって振り返ると「いいところあるじゃん、日本」と自分たちで思えるかもしれませんね。

SHELLY
あとは、海外からしてもらったことへの感謝もやっぱり表さないといけないと思います。

伊藤
そこですよね。日本の課題としては、表す、表現するということですよね。

SHELLY
そうです。そういうことも表現して、世界が今自国ファーストになっている中で、そうではないやり方で発展してきて、今もなお平和を保っている日本を見せられたら、世界中が「おお~!」となる気がしています。伊藤さんは、開会式・閉会式でどの様なことが表現できたらいいと思われますか?

伊藤
日本はおもてなし精神もあると思うのですが、パーフェクトな開会式・閉会式を目指して欲しいなと思います。失敗がないというかミスのないものが見たいですね。例えばリオだと、ミスがあっても「ブラジルだし、笑って」と言えると思うのですが、日本の良さは、しっかりとやりきるとか、時間を守るとか、そういうイメージだと思います。なので日本だと、全部計算された動線で感動的なフィナーレを迎えられるような気がしますし、期待もしてしまいます。また、より鮮やかな芸術的要素も入ってくるといいですよね。

インタビュー中の伊藤さん

場所は東京だけど、日本のオリンピック・パラリンピックがやれたらいいな

伊藤
今は日本という切り口でしたが、東京という切り口ですと、どの様なことが表現されるといいと思いますか?

SHELLY
私の正直な気持ちは、日本のオリンピックが東京で行われているということだけで、東京は押さなくていいと思っています。そもそも東京に招致する時に、東京の人全員が「ぜひぜひ」という気持ちではなかったということもわかっていますし、「え~、東京でやるの?」という人も結構いたということもわかっていて、招致の時に、コンパクトにできるとか、交通の便がいいとかそういうことで東京になっているだけなので、「東京っていい街でしょ」というものではなく、日本全体が一つになってやるということの方が意味のあることだと思います。今オールジャパンでやりましょうと打ち出していますが、「東京、東京」となってしまうと地方が置いていかれると思うので、場所は東京だけれども、日本のオリンピックというのがいいと思います。個人的には、日本は織物や焼物、踊りや歌をとってみても本当に地方地方で全然違っているので、そういうものをどんどん引っ張ってきて、それをごちゃ混ぜにしたものが、それこそが東京らしさになるのではないかと思います。実際に東京の人は、地方から出てきている人たちが混ざって、東京人だと思うので。伊藤さんはどう思われますか?

伊藤
東京でやるということに関しては、招致の時にも言っていましたが、やはり、便利さとか、スマートさとかコンパクトとか、そういう面を見せていけたらいいなと思います。あと、頑張りすぎなくていいと思っています。これは、「日本・東京はこうだ!」ということを見せなくていいという意味です。オリンピック・パラリンピックは2020年以降も続いていくものなので、大会の歴史の一部として東京が考えるカラーが出せればいいのではないかと思います。SHELLYさんのお話を聞いていると、本当にすごいなと思うのですが、日本を表現するときに、富士山、芸者、忍者というものを出した方がいいという方もいるのですが、どう思われますか?

SHELLY
そうですね。わかりやすい日本を表現するか、本物の日本を表現するかだと思います。今、日本に来られている海外の方たちは、芸者、富士山、忍者っていうことを求めてやって来てないらしいです。そういう人たちは、東京ではなくて地方に行って、本物の日本の文化を見に行っているようです。なので、表面の日本ではなくて、本物の日本をちゃんと伝えた方が、面白い素敵と感じてくれると思います。

2020年までの目標が自分自身の成長のきっかけに

伊藤
開会式・閉会式により多くの方々に関わってもらうためにどうしたらいいと思いますか?

SHELLY
そうですね。ロンドンの時に、開会式・閉会式のボランティアの数がすごく多いにも関わらず、秘密主義でやって演出が絶対バレないようにやったというのは、面白いなと思いました。これが実現できたのは、関わった人たち全員が、自分こそが開会式・閉会式を作っていると思うと同時に、秘密を守らなくてはいけないという責任感が芽生えたからだと思います。例えば、テレビのドラマだと、エキストラとプロに分かれると思うのですが、そうではなくて、純粋な興味だけで集まってきた人たちにもしっかりと役割を与えて、一緒に作っていくということは、きっと制作側も勉強になると思いますし、参加した人にとっては一生忘れない大会になると思います。あとはイベントを増やせば、それだけボランティアの数も必要になると思うので、そういうイベントとか、祭りごとをたくさんやるというのも関われる人を増やすことにつながると思います。伊藤さんはどう思われますか?

伊藤
色々な人と話していると、開会式に注目している方がすごく多いと感じます。ただ、実際に行くことができる人は限られると思うので、開会式会場の周りなどで、少しでも開会式を感じられるようにライブビューイングのようなものを作って欲しいです。選ばれた人しか行けないとかではなくて、注目度が高いのでちょっとでも参加している感じが感じられるようにしてもらえるようにして欲しいと思います。それでは、最後になりましたが、皆さんに一言お願いできますでしょうか。

SHELLY
そうですね。正直関わらせていただいている私ですら、まだ東京オリンピックはすごく遠いもので実感もないですし、「本当にやるの?」って、これだけ関わらせていただいていても感じるので、きっと一般の方はもっとそうだと思います。でも、意外とすごく身近なところでオリンピックって関われることがあったりすると思っています。今テレビでオリンピック・パラリンピックに向けて色々な活動をしている人を取り上げる番組をさせてもらっているのですが、町の商店街でみんなで英語と中国語の勉強会をやっていたり、銭湯のルールを紹介している外国人の方がいたりと、ひとつひとつを見ていくと、意外と今からやれることって結構あるなということとか、気持ちの盛り上げって自分次第だったりするのだなと思います。何かひとつ具体的にやれることを見つけると、「お、いよいよオリンピック・パラリンピックに向けて私も動き出したぞ」となると思うので、ニュースを見たり、イベントに参加するのももちろん楽しいと思いますけれど、なんとなく自分の中でひとつ2020年に向けて課題を作って、オリンピック・パラリンピックまでに私も成長しようという目標を作ると、ちょっと関わっている感もありますし、楽しくなるのかなって思います。

インタビュー中のSHELLYさん

プロフィール

SHELLY 1984年5月11日生まれ 東京2020組織委員会文化・教育委員会委員、タレント。
アメリカ人の父と日本人の母を持つハーフタレント。スカウトがきっかけで14歳のときにモデルデビューし、ファッション誌のモデルやテレビやラジオのDJ、VJとしても活躍。現在は、様々なバラエティー番組などで司会として活躍している。

伊藤 華英 1985年1月18日生まれ 東京2020組織委員会広報局職員、元競泳選手。
2000年日本選手権に15歳で初めて出場。競泳選手として、2001年世界選手権から女子背泳ぎ選手として注目された。 2008年女子100m背泳ぎ日本記録を樹立し、北京オリンピックの代表選手となる。その後、怪我により、2009年に背泳ぎから自由形に転向し、2012年ロンドンオリンピック自由形の代表選手となる。その後、2012年の国体を最後に現役を引退。