陸上競技

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陸上競技のピクトグラム

オリンピック競技

陸上競技

  • トラック
  • フィールド
  • ロード
  • 混成

世界記録のその先へ。人類最速を決める戦いがはじまる。

競技概要

競技場内1周400メートルの走路「トラック」を使って実施される競技。オリンピックでは短距離走、中・長距離走、障害走、ハードル、リレーが行われ、距離、男女別に合計25種目が行われる。共通するのは「走って競う」ということ。生身の人間が「いかに速く走れるか」に挑戦するというシンプルな競技だけに体力が全てと思われがちだが、スタートを始め多くの技術も身につけないと世界の上位に食い込むことは難しい。0.1 秒、0.01 秒速く走るため、トラックでは鍛え抜かれた選手たちが肉体の限界に挑む激烈な戦いが繰り広げられる。

ESSENCE OF THE SPORT/競技の魅力、見どころを紹介!

いかに速く走るか 人類に与えられたシンプルなテーマへの挑戦

トラックの写真1

短距離走では、100m、200m、400m走が行われる。この男女6種目とハードル男女4種目だけは、スターティングブロックを使用したクラウチングスタートで行われる。「人類最速」を決める100mは直線路のみでレースが完結。アテネ1896大会で12秒0だった記録は、メキシコシティー1968大会で初めてジム・ハインズ(アメリカ)が10秒を切り、その後主にアメリカ選手とジャマイカ選手によって記録が更新されてきた。現在の男子100mの世界記録はウサイン・ボルト(ジャマイカ)が2009年の世界陸上で記録した9秒58。平均すると10メートルを1秒以内で走り抜けていることになる。100mではスタートの反応も重要だ。200mではスプリント力に加え、コーナリングの上手さが必要になる。400mはさらにスタミナも要求され、厳しいレースとなる。

中・長距離走では、800m、1,500m、3,000m障害、5,000m、10,000mが行われる。この距離では、スタンディングスタートでレースが開始される。800mはスタートから100mだけセパレートレーンを走り、その後オープンレーンとなる。1,500m以上は弧状のスタートラインに立ち、始めからオープンレーンで行われる。800m、1,500mは最後までスタミナを維持する持久力に加えて、ラストスパートでは短距離選手に匹敵するスピードも求められる。一方、5,000m以上は持久力の有無が勝つための大きな要素となり、エネルギー効率を考えた無駄のない走りが必要になる。また、トップ集団に位置するか、中盤か、あるいは後方から追い上げるかなどの戦略や、他の選手との駆け引きも重要だ。

中・長距離走に跳躍の要素が加わった種目が3,000m障害だ。トラック1周に5カ所設置された障害物を越え、記録と順位を競う。障害物の高さは男子91.4センチメートル、女子76.2センチメートルだが、5カ所のうち1カ所には、障害物の直後に水濠がある。距離が長いだけでなく、障害物を越えながら走らなくてはいけない。水濠で転倒して全身びしょ濡れになる選手も多く、たいへん過酷な種目だ。

ハードル走は女子100m、男子110m、男女400mの4種目が行われ、コース上に置かれた10台のハードルを跳び越えながら走り、タイムを競う。このうち女子100mと男子110mは直線路で実施される。全種目、ハードルは故意でなければ倒しても失格にはならない。

4人の選手がバトンをつなぎながら走るリレーは、単に自己ベストが速い選手を4人集めれば勝てるという種目ではない。それを証明したのがリオデジャネイロ2016大会男子4×100mリレーの日本チームだ。100m9秒台の選手がひしめく中で、100m9秒台が1人もいない日本が強豪ジャマイカに次いで2位に入り銀メダルを獲得した。日本が行ったバトンパスは、効率が良い一方で難易度が高い「アンダーハンドパス」。失敗しないよう徹底的に研究、何度も練習し成功させた。東京2020大会の新種目、男女混合4×400mリレーは、男女各2名の選手を何走に配置するかが重要な戦略となる。大逆転が起こりうる注目すべき新種目だ。

全てのトラック種目に共通するのは、いかに速く走るかということ。それは相手との戦いであると同時に、自己の記録との戦いでもある。

OUTLOOK FOR THE TOKYO 2020 GAMES/2020年に向けた競技の展望

短距離は北中米が他を圧倒 中・長距離はアフリカ出身選手がせめぎ合う

トラックの写真2

短距離界では、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)が、リオデジャネイロ2016大会を最後に、オリンピックからの引退を表明。女子では同世代のロンドン2012大会100m金メダルのシェリー=アン・フレーザー=プライス(ジャマイカ)、200m金メダルのアリソン・フェリックス(アメリカ)の世界的女王2人が、リオデジャネイロ2016大会でそろって敗れた。代わって近年台頭してきたのが、同大会の女子100m、200mで2冠を獲得したエレイン・トンプソン(ジャマイカ)、男子400mを世界新記録で制した同年齢のウェイド・バンニーケルク(南アフリカ)、女子400mショーナ・ミラー(バハマ)らである。

女子100mハードル、男子110mハードル、男女400mハードルではアメリカ、ジャマイカの選手が常に世界ランキングの上位を占めている。リレーもジャマイカとアメリカが強いが、リオデジャネイロ2016大会の日本のようにチームワークとテクニックがあれば、他のチームが上位に食い込んでくることもある。また、バトンパスの失敗で失格になることが多いだけに、予想外の結果もあり得る。

長距離では、驚異的な世界新記録でリオデジャネイロ2016大会の金メダルを獲得した女子10,000mのアルマズ・アヤナ(エチオピア)の勢いに注目したい。5,000m決勝は前半から飛ばしすぎて3位に甘んじたが、今後、女子長距離2種目で世界の中心選手となるのは間違いない。

女子はリオデジャネイロ2016大会の10,000mと5,000mのメダルの全てをエチオピアとケニアの選手が獲得した。男子長距離は、ソマリア出身のモハメド・ファラー(イギリス)が、リオデジャネイロ2016大会で10,000mと5,000mの2冠を達成。ロンドン2012大会以降、2013年と2015年の世界選手権を含め、同2種目で負け知らずだ。オリンピックの2冠連覇は40年ぶりの快挙でもあった。ファラーは次のオリンピックではマラソンで金メダルを狙うと公言している。長距離のトラック種目は、今後もアフリカ出身選手を中心に展開していくと思われる。

<日本>
アムステルダム1928大会での人見絹枝の女子800m銀メダル以来、長い間、トラック種目でのメダル獲得がなかった日本だが、北京2008大会の男子4×100mリレーで80年ぶりのメダル(銅)を獲得した。そしてリオデジャネイロ2016大会の男子4×100mリレーでは銀メダルを獲得。若手の短距離選手の躍進が目立つようになってきた。選手個々の自己ベストはアメリカやジャマイカには差をつけられているが、持ち前のチームワークを発揮して、男子4×100mリレーでの3個目のメダルを実現させてほしいものだ。

TRIVIA/知られざる競技のヒミツ

Question

トラック競技において、体のどの部分がフィニッシュラインに到達したらフィニッシュ(ゴール)と認められるか?

Answer

A:胴体。
手、腕、脚、足、頭、頸以外の胴体がフィニッシュラインに到達した時がフィニッシュ(ゴール)となる。頭や手、足を突き出しても胴体がフィニッシュラインに到達していなくてはフィニッシュとはならない。

華麗な跳躍、力強い投てき。1cmでもより高く、遠くへ。

競技概要

陸上競技でトラックの内側や外側で行われる競技をフィールド競技とよぶ。フィールド競技は、「跳躍」と「投てき」の2つに分けられる。「跳躍」は、走高跳、棒高跳、走幅跳、三段跳の4種目で、跳ぶ高さや距離を競う。「投てき」も、砲丸投、円盤投、ハンマー投、やり投の4種目で、こちらは手で投てき用具を遠くへ投げ、その距離を競う。フィールド競技はトラック競技のように何人もの選手が同時に競うことはない。1人ずつ試技を行い、その記録で順位が決まる。フィールド競技は、記録への挑戦であり、自分との勝負なのだ。

ESSENCE OF THE SPORT/競技の魅力、見どころを紹介!

一瞬に賭ける選手たち 好記録とフォームの美しさは比例する?

フィールドの写真1

跳躍
跳び越えるバーの高さを競う走高跳。かつて、はさみ跳び、ベリーロールなどさまざまなスタイルで行われてきた走高跳は、メキシコシティー1968大会でディック・フォスベリー(アメリカ)が背面跳びを用いて優勝して以来、ほとんどの選手が背面跳びを行うようになった。男子は2m40台、女子は2m前後の戦いが繰り広げられる。自分の身長を超える高さを舞うように跳び越える美しいフォームにも注目しよう。走高跳は、パスを除いて3回続けて失敗すると敗退となる。助走のスピード、踏み切るタイミング、きれいな空中姿勢が好記録を生むポイントだ。

棒高跳は、ポールを使用してバーを跳び越え、その高さを競う。かつては木製や竹製のポールが使われていたが、東京1964大会でグラスファイバー製のポールが使われるようになり、記録は大幅に伸びた。現在では、より大きくしなり復元力が強いガラス繊維や炭素繊維を用いた強化プラスチック製のポールが使用され、さらに記録を伸ばしている。トップクラスの棒高跳選手は、ある程度の高さになるまではパスをして体力を温存し、より高いバーにチャレンジすることがある。だが最初の高さで3回続けて失敗すると記録が残らず、どの色のメダルにも届かなくなる。リスクをかけてチャレンジするか、体力を消耗しながらも確実に記録を残すか、各選手の戦略に注目したい。

前方へ跳ぶ距離を競う走幅跳。選手は、空中で脚を回転させるはさみ跳びか、空中で体を大きくそらせてから前へかがむそり跳びで跳ぶことが多い。踏み切る時に足が踏み切り板を越えるとファウルになり、3回のファウルで記録なしになる。踏み切り板を越えないようにしながら可能な限り前方で踏み切ると記録が伸びるのだが、ファウルも怖い。踏み切り板ばかり気にしていると大きなジャンプができない。そうした選手の葛藤が見もの。走高跳も同様だが、自分を盛り上げ集中するように助走の際、観客に手拍子を要求する選手のパフォーマンスにも注目したい。助走スピードが跳躍距離に影響するため、短距離のトップ選手が走幅跳でも活躍するケースが多い。

ホップ・ステップ・ジャンプと3回跳び、その距離を競う三段跳。1歩目と2歩目を同じ側の足で踏み切り、最後のジャンプを反対側の足で踏み切る。走幅跳と比べて競技テクニックが必要になる種目。助走スピードやジャンプ力ももちろん必要だが、3回のジャンプをスムーズに行う調整力も必要になる。そのため、経験豊富なベテラン勢が活躍することも多い。この三段跳と走幅跳は、オリンピックの決勝では6回の跳躍チャンスが与えられるが、4回目以降に進めるのは上位8人だけである。

投てき
砲丸投は男子7.26キログラム、女子4キログラムの金属の球を投げ、その距離を競う。片手で押すように投げなくてはならず、野球のピッチャーのような投げ方はファウルになる。巨体から繰り出されるダイナミックな投てきでは、重い金属球を20メートル以上飛ばす。その迫力に注目だ。

円盤投では、直径2.5メートルのサークル内で選手が回転し、遠心力を利用して円盤を投げ、その距離を競う。円盤の重さは男子2キログラム、女子1キログラム。距離を伸ばすためには筋力だけでなく、回転エネルギーを円盤が前方に飛び出すための力に変えるためのテクニックが重要だ。風の影響を強く受けやすいのも円盤投の特徴。選手が風をつかむタイミングも見ていきたい。

ワイヤーの先に砲丸がついたハンマーを投げ、飛んだ距離を競うハンマー投。グリップ、ワイヤー、砲丸を合わせたハンマー全体の重さは、男子7.26キログラム、女子4キログラム。これは砲丸投の砲丸と同じ重量である。選手は直径2.135メートルのサークル内で3~4回転し、遠心力を利用して投げる。雄叫びとともに重いハンマーを80メートルも飛ばす選手の気迫に満ちた投てきには、凄みがある。

砲丸投、円盤投、ハンマー投がサークル内から投げるのに対して、やり投は投てきの中で唯一、助走をつけて投げる。回転投法は認められていない。やりの重さは、男子800グラム、女子600グラムで、長さは、男子2.6~2.7メートル、女子2.2~2.3メートル。男子は90メートル台、女子は70メートル台の勝負となる。まっすぐ走りまっすぐ投げるという、他の投てき種目にない直線的なスピード感が魅力だ。

投てき種目はすべて予選通過標準記録に達した選手が決勝に進む。決勝では3回の試技で上位8番目までの記録の選手が残ってさらに3回の試技を行い、合計6回の試技の中での最高記録によって順位が決まる。

跳躍、投てきともに、上位にくる選手は力強いだけでなく、動作も美しい。流れるようなフォーム、迫力あるアクションもフィールド競技の見どころのひとつだ。

OUTLOOK FOR THE TOKYO 2020 GAMES/2020年に向けた競技の展望

欧米勢が強いフィールド アジアがどこまで食い込めるか?

跳躍
アメリカとヨーロッパ勢が強い種目。高い身長がジャンプの高さにある程度影響するため、体格に勝る欧米選手が上位を占める傾向は今後も続くと考えられる。
棒高跳の男子は、アメリカとヨーロッパ勢が入り乱れる展開となっている。女子の棒高跳はシドニー2000大会からと歴史が浅い。過去5大会でエレーナ・イシンバエワ(ロシア)が金メダル2個と銅メダル1個を獲得しているが、引退を決めている。女子も欧米選手の戦いが予想される。
走幅跳は伝統的にアメリカの活躍が際立っており、男子ではロサンゼルス1984大会からアトランタ1996大会まで4連覇したカール・ルイスなど、ヒーローを輩出してきた種目。女子もアメリカに勢いがある。
三段跳の男子はアメリカが強い。だが、女子はアメリカが上位に顔を出さず、ヨーロッパ、アフリカ、南米などさまざまな国・地域の選手が入り乱れている。
東京2020大会の跳躍も、欧米選手が中心となるだろう。

フィールドの写真2

投てき
砲丸投はかつて、男子はアメリカ、女子はソ連(ロシア)が圧倒的に得意としてきた種目。近年はヨーロッパやニュージーランド選手の活躍が目立つが、リオデジャネイロ2016大会ではアメリカが復活し、男女とも優勝している。
円盤投の男子は、かつてはアメリカのパワーが群を抜いていたが、最近はヨーロッパ勢が強さをみせている。女子もヨーロッパが強い。
ハンマー投男子は、ロシア、ハンガリー、ベラルーシ、ポーランド、スロベニアなど東欧の活躍が目立つ。女子はシドニー2000大会から正式種目として採用されているが、東欧に加えてキューバや中国が活躍している。
やり投は男女ともにヨーロッパ勢がメダリストの大半を占める。
フィールドは全体にヨーロッパの選手が強い。だが投てきでは、近年、中国が台頭してきており、今後はアジアの選手が活躍する可能性がある。

<日本>
アムステルダム1928大会の三段跳で、織田幹雄が日本初のオリンピック金メダルを獲得した。次のロサンゼルス1932大会には南部忠平が、さらにベルリン1936大会には田島直人が金メダルを獲得し、日本の三段跳3連覇を果たした。棒高跳でも西田修平がロサンゼルス1932大会とベルリン1936大会で銀メダルを手にするなど、かつての日本は跳躍が強かった。しかし、第二次世界大戦後は日本の跳躍のメダル数はゼロだ。投てきはもともと日本が強い種目ではなかったが、ハンマー投げの室伏広治がアテネ2004大会で金メダル、ロンドン2012大会で銅メダルを獲得している。だが、それ以降は続いていないのが実情だ。今後の若手の活躍に期待したい。

TRIVIA/知られざる競技のヒミツ

Question

やり投では、投てき後の選手が助走エリアから正しく離れ、また、やりもラインの内側に着地しているにもかかわらずファウルになる場合がある。それはどのようなケース?

Answer

A:やりの頭部から先に地面に落下しなかったケース。
やり投では頭部から先に地面に落下した場合のみ計測され、投げる際に手で握るグリップ部や後部など、頭部以外の部分から先に落下した場合は計測されない。

真夏の過酷なレース。己のスタミナと精神力の限界に挑む。

競技概要

ロード(一般道路)で実施される種目はマラソンと競歩である。紀元前5世紀、ギリシャのマラトンに上陸したペルシャ軍をアテナイ(アテネ)軍は討ち破る。勝利の知らせをアテナイに伝えるため、若い兵士がマラトンからアテネの約40キロメートルを走り、「われ勝てり!」と伝えて息絶えたという。そうした言い伝えからその名がついたマラソン。アテネ1896大会(男子のみ)以来、オリンピックでは欠かさずに行われており、数あるオリンピック競技のなかでも最も人気が高いものの1つだ。

競歩は「歩く」速さを競う種目で、常に左右どちらかの足が地面に接していなくてはならない。また、前に振り出した脚が接地してから腰の真下に来るまで膝が曲がってはいけない。オリンピックではロンドン1908大会で、トラック種目として3,500m競歩が行われているが、ロードで行われるようになったのはロサンゼルス1932大会からである。

マラソンも競歩も距離が長いだけでなく、路面の状態や道の勾配、気象条件などの影響を大きく受ける種目である。選手同士、選手自身、そして自然との過酷な戦いに注目しよう。

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一般道路の長い距離で繰り広げられる戦い 選手たちは持久力の限界に挑む

ロードの写真1

男子のマラソンはアテネ1896大会から、女子はロサンゼルス1984大会から行われている。距離は42.195キロメートル。ロードで行われるマラソンは、坂道のアップダウンや路面の状態などのロードコンディションが選手に大きな影響を与える。そのため、選手とコーチはあらかじめコースを下見して、勝負を仕掛けるポイントや走り方についての作戦を練る。

天候の影響を受けやすいマラソンだが、実際に東京2020大会のマラソンが行われる8月の東京は、気温が30度を超え、湿度も70パーセントを上回ることが予想される。これはかなり蒸し暑い。そのため、水分補給が重要となるが、給水ポイントは選手同士の接触が多く転倒事故が起きやすい場所でもある。
バルセロナ1992大会の男子マラソンに出場した谷口浩美は優勝候補の1人と言われたが、給水ポイントでシューズの踵を踏まれて転倒。その後追い上げて8位に入賞したが、転倒のタイムロスは大きかった。

現在、世界で行われているマラソン大会では、選手と一緒にペースメーカーが走ることが多い。ペースメーカーがいると、選手は彼らについていけば設定のラップが刻めることや、風除けに利用することもできるため、良い記録が出やすいからだ。しかし、オリンピックのマラソンにはペースメーカーがいないため、選手は自分でペースを作っていかなくてはならない。また、選手同士の熾烈な駆け引きも行われる。仕掛けるタイミング、仕掛けられた時についていくかそれとも自分のペースを維持するか、追い抜くタイミングはいつかなど、注目すべきポイントは多い。

マラソン1キロメートルの平均タイムは、男子で3分〜3分10秒、女子は3分20〜30秒。これを上回れば上位に食い込むことができる可能性が高い。ラップタイムにも注目だ。

歩くタイムを競う競歩では、走ってはいけない。両足が同時に地面から離れないかなどを審判員が厳しくチェックし、明らかな反則に対しては「レッドカード」が示される。同一の選手に対して3人以上の審判員からレッドカードが出されたことが確認されると、その選手は失格となる。競歩は、相手選手、自分の記録、気象条件だけでなく、厳しいルールとの戦いでもあるのだ。

競歩は、男子50kmと20km、女子20kmで行われる。「歩く」種目であることから、それほどスピードは出ていないと思われがちだが、男子50kmの世界記録は、ヨアン・ディニス(フランス)が2014年に記録した3時間32分33秒。マラソンのフィニッシュにあたる42.195キロメートル地点では、ほぼ3時間の記録になる。フルマラソンを走ったことのある人なら、これがいかに速いタイムかがわかるだろう。それを歩いて記録してしまうのだ。

また、男子50kmは陸上競技で最も距離の長い種目であり、それゆえに最も過酷な陸上競技と言われることもある。ひたすら前を向き懸命に「歩く」競歩選手のストイックさに心打たれる観客も多い。

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長い距離の「ロード」ならではの心理戦と駆け引きに注目

ロードの写真2

アテネ1896大会から実施されている男子のマラソン。これまでにオリンピックで連覇を果たした選手は2人しかいない。ローマ1960大会と東京1964大会のアベベ・ビキラ(エチオピア)、モントリオール1976大会とモスクワ1980大会のワルデマール・チェルピンスキー(東ドイツ)だ。ロサンゼルス1984大会から始まった女子マラソンでの連覇はゼロ。それほど上位であり続けることが困難な種目である。

最近の男子の記録は2時間10分前後。世界記録は2時間02分台であるため、オリンピックの記録はかなり遅い。だが、速いタイムが出るのは平坦なコースで、しかも真夏に行われないレース。アテネ2004大会以降のオリンピックはすべて8月に行われているため、選手は猛暑と戦いながら走ることになり、おのずとタイムは遅くなる。近年のオリンピックのマラソンでは男女ともに、暑さに強いケニアやエチオピアなどアフリカの選手がメダルを獲得している。

競歩は伝統的にヨーロッパ勢が強かった。だが、男子20kmではロンドン2012大会で中国が金と銅、リオデジャネイロ2016大会で同じく中国が金と銀メダルを獲得し、男子50kmでは日本の荒井広宙が銅メダルを手にしている。女子でもリオデジャネイロ2016大会で中国が金と銅メダルを獲得するなど、アジア勢の活躍が目立つ。東京2020大会では地元アジア勢を中心としてメダル争いが展開される可能性がある。

マラソンも競歩も、オリンピックにおいては記録ではなく順位を狙う。参加する全ての選手は、いかに他の選手より先にフィニッシュするかを考え、激しい戦いを繰り広げる。そこではいかに速く走るかというシンプルな競争だけでなく、相手を弱気にさせたり混乱させたりするための心理戦が展開される。向かい風が吹けば他の選手の後ろを走る、後半のきつい上り坂でスピードアップする、表情を読み取られないようにサングラスをする、あえて苦しくない表情を作って併走する、自分の影が相手に見えないようにして近くを走るなど、あの手この手で相手を動揺させることがある。また、同じチームの選手が集まってトップ集団を形成し、スピードを上げ下げして後続を揺さぶることもある。そうしたシビアな心理戦にも注目しよう。

<日本>
日本はかつてマラソンで多くのメダルを獲得している。特に女子マラソンでは、シドニー2000大会の高橋尚子とアテネ2004大会の野口みずきによって、日本のマラソン連覇が達成された。ロンドン2012大会、リオデジャネイロ2016大会では、エチオピア、ケニアの選手が金メダルを獲得しており、アフリカ勢が強い印象だが、ロンドン2012大会の優勝タイムは2時間23分07秒、リオデジャネイロ2016大会は2時間24分04秒。一方、シドニー2000大会の高橋のタイムは2時間23分14秒と、最近の記録と変わらないか速いほどである。高橋や野口のような選手の再登場を待ちたい。

競歩では2015年3月に男子20kmで鈴木雄介が当時の世界新記録を樹立。同年の世界選手権の男子50kmで谷井孝行が銅メダル。リオデジャネイロ2016大会の男子50kmで荒井広宙が銅メダルと、日本選手の活躍が続いている。選手層は厚みを増してきており、2020年に向けて期待が持てる。

TRIVIA/知られざる競技のヒミツ

Question

オリンピックの競歩では、およそ何キロメートルごとに給水ポイントを設けているか?

Answer

A:約5キロメートル。
ロードレースでは約5キロメートルごとに給水ポイントを設けなくてはいけないという規則がある。これはマラソンも同じだ。競歩では周回ごとに給水ポイントを設ける。給水ポイントには、それぞれの選手が独自の飲み物(スペシャルドリンク)などを置くことができる。

陸上競技の覇者「キング・オブ・アスリート」、「クイーン・オブ・アスリート」の称号を勝ち取れ。

競技概要

紀元前708年、古代オリンピックでは、あらゆる競技能力に秀でた競技者を決めるため、「五種競技」が考えられた。これは、陸上4種目とレスリングの合計5種目を行い、順位を競うというものである。この競技にちなんで近代オリンピックで行われているのは、男子の10種競技と女子の7種競技。どちらも短距離、中・長距離、跳躍、投てきという陸上競技の全ての要素においてトップクラスの実力を持った選手同士が戦い、究極のオールラウンダーを決める。そのため、10種競技の勝者は「キング・オブ・アスリート」、7種競技の勝者は「クイーン・オブ・アスリート」と呼ばれる。

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2日間にわたる長く過酷なレース 選手同士が生み出す勝敗を越えた連帯感に注目

混成の写真1

男子の10種競技と女子の7種競技は、ともに2日間かけて戦われる。競技日程は以下の通り。

10種競技(男子)
  • ・1日目:100m、走幅跳、砲丸投、走高跳、400m
  • ・2日目:110mハードル、円盤投、棒高跳、やり投、1,500m
7種競技(女子)
  • ・1日目:100mハードル、走高跳、砲丸投、200m
  • ・2日目:走幅跳、やり投、800m

短距離、中・長距離、跳躍、投てきという陸上競技の全ての要素が入るが、それぞれに使う筋肉やトレーニング方法が異なり、種目によっては相反する身体能力が必要となるため、全てにおいてトップの成績を収めるのは至難の技だ。そもそも2日間にわたって最高のパフォーマンスを維持することは難しい。そこで、選手は自分の得手不得手に応じて、投てきの試技の回数を少なめにして次の種目に集中したり、不得手な種目で力を抑えて体力を温存したりするなど、戦略的に競技を進めていく。

最も注目すべきは、最後に行われる中・長距離。10種競技の1,500m、7種競技の800mだ。最終順位が決まるというだけでなく、2日間の過酷な戦いのフィナーレを飾る種目になるからである。2日間、厳しい戦いを繰り広げた選手たちの間には、いつのまにかライバルを超えた連帯感が生まれる。そのため最終レースのフィニッシュでは、選手同士で手をつないだり、笑顔で抱き合ったり、肩を組んでウイニングランをしたりと、感動的なシーンが見られる。勝者も敗者もなくお互いに健闘を讃え合う選手たち。スタジアムの観客からは大きな拍手と歓声が沸き起こる。競技場全体が感動に包まれるのが、10種競技、7種競技のフィナーレなのだ。

OUTLOOK FOR THE TOKYO 2020 GAMES/2020年に向けた競技の展望

欧米勢がけん引。若手の台頭に期待したい。

混成の写真2

10種競技は欧米選手が強さを誇っている。最近ではアシュトン・イートン(アメリカ)がロンドン2012大会とリオデジャネイロ2016大会のオリンピック2連覇。2013年と2015年の世界陸上競技選手権でも金メダルを獲得しているイートンだが、2017年1月に引退を表明した。リオデジャネイロ2016大会で銀メダルを獲得したケビン・マイヤー(フランス)が、しばらくは10種競技を引っ張る存在になると考えられる。

7種競技はかつてジャッキー・ジョイナー=カーシー(アメリカ)が圧倒的な強さを発揮。ロサンゼルス1984大会で銀メダル、続くソウル1988大会とバルセロナ1992大会で連覇を果たした。
だが、それ以降はジェシカ・エニス=ヒル(イギリス)を中心にヨーロッパ勢が上位を占めている。近年の注目選手はナフィサトウ・ティアム(ベルギー)だ。リオデジャネイロ2016大会で金メダルに輝いたティアムは、2017年5月、オーストリアで行われた混成競技の大会で優勝。世界3位の記録だった。東京2020大会でも活躍が期待される。

<日本>
国内の10種競技では、リオデジャネイロ2016大会で日本チームの旗手を務めた日本記録保持者の右代啓祐が盤石の強さを誇っていたが、2017年の世界陸上選手権代表選考会では右代より4歳若い中村明彦が優勝。右代とともに世界陸上の代表になった。中村は右代同様リオデジャネイロ2016大会代表。これからの日本の10種競技をけん引する存在だ。

7種競技では、日本人の母とアメリカ人の父をもつヘンプヒル恵(めぐ)に注目。ヘンプヒルは、日本選手権を2015年から3連覇中。混成競技での世界の壁は厚い。だが、急成長中のヘンプヒルならメダルを狙える可能性がある。東京2020大会での活躍を期待したい。

TRIVIA/知られざる競技のヒミツ

Question

混成(十種競技、七種競技)の選手は、競技の性格上、あるものをたくさん持っていかなくてはならないが、それは何か?

Answer

A:スパイクシューズ。
短距離、中・長距離、跳躍、投てきで、それぞれ専用のスパイクシューズが必要になるため、混成の選手のバッグの中は、たくさんの種類のスパイクシューズであふれている。

競技会場

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